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街を歩いているとき、建物の壁面や入り口で、金属のプレートから文字が浮き出ているように見える看板を見かけたことはないでしょうか。
「お店の雰囲気に合わせて、品のある看板を作りたいと思っています。特に文字が光るタイプに惹かれるのですが、長くきれいに使い続けるためにはどんな点に気をつければ良いのでしょうか。素材や作り方のこだわりについても詳しく知りたいです。」
これは「象嵌(ぞうがん)サイン」と呼ばれるもので、その洗練された佇まいは、多くの店舗や企業の顔として親しまれています。特に夜になり、内側のLEDから漏れる柔らかな光が文字を縁取る様子は、見る人の心に深い印象を残します。
一見すると非常にシンプルで完成された形に見えますが、その背景には、最新の技術と職人の手仕事が幾重にも積み重なっています。特に、看板の表情を左右するアクリル素材の選び方や、接着面に気泡を入れないための細かな工夫には、プロならではのこだわりが凝縮されています。
この記事では、象嵌サインの軸となるアクリル素材に注目し、完成までの重要なプロセスを詳しく紐解いていきます。
象嵌サインにおいて、光を透過させる文字部分を担うアクリル板は、仕上がりを左右する最も重要なパーツです。
一口にアクリルと言っても、実はその製法によって性質が大きく異なります。私たちが象嵌サインの制作に必ず用いるのは、国産の「キャスト板」と呼ばれる高品質な素材です。
キャスト板は、二枚のガラスの間に原料を流し込み、長い時間をかけてじっくりと固めて作られます。この製法によって分子同士が非常に強く結びつくため、硬度が高く、熱や衝撃にも強いという特別な魅力があります。
屋外という過酷な環境で、何年もの間、雨風や直射日光にさらされ続ける看板にとって、この耐久性は欠かせない要素です。私たちが全幅の信頼を寄せている国産キャスト板には、三菱レイヨンの「アクリライト」、住友化学の「スミペック」、カナセ工業の「カナセライト」といった、日本が世界に誇るメーカーの製品があります。
これらの素材は、厚みの精度が非常に高く、光を透かしたときのムラもほとんどありません。一方で、安価な海外製の押し出し板などは、分子の結合が弱いために、加工中にひびが入ったり、数年で表面がくすんでしまったりすることがあります。
お客様の大切な看板を、いつまでも新品のような透明感で保ちたい。その思いから、私たちは乳半色の3ミリから20ミリ、時には50ミリにもなる厚手の透明アクリルまで、用途に合わせて最適な国産キャスト板を選び抜いています。


象嵌サインの制作において、アクリル同士を繋ぎ合わせる工程は、作品に命を吹き込む重要な瞬間です。
ここで使われるのは、「メチレンクロライド」という特殊な接着剤です。これは無色透明で、水のようにサラサラとした液体ですが、一般的なボンドとは全く異なる性質を持っています。
板同士を上から貼り付けるのではなく、アクリルの表面をわずかに溶かして、分子レベルで一つに溶け合わせる「溶着」という手法をとります。この方法を用いると、接着したあとの境目がどこにあるのか分からないほど透明に仕上がるという魅力があります。
象嵌サインは内側にLEDを仕込むため、接着面にわずかな濁りやムラがあると、光を灯したときにそれが影となって現れてしまいます。メチレンクロライドは揮発性が非常に高く、取り扱いには専門的な知識と熟練の技が求められます。
ホームセンターなどで一般に販売されているものではなく、私たちプロの職人が細い針先を使って、コンマ数ミリの隙間に正確に流し込んでいきます。多すぎれば表面を汚してしまい、少なすぎれば強度が足りなくなります。
アクリルという素材の特性を熟知し、その日の気温や湿度に合わせて最適な量を調整する。この地道で繊細な作業が、看板の文字を内側から溢れるような美しい光で満たすための基盤となります。
透明な素材を、透明なままに繋ぎ合わせる。このシンプルながらも奥が深い技術こそが、象嵌サインに宿る風格を支えています。
アクリルを接着する際、最も大きな課題となるのが「気泡」の混入です。
どれほど高品質な素材や接着剤を使用していても、接着面にわずかな歪みや凸凹があれば、そこから空気が入り込み、小さな粒となって残ってしまいます。これを防ぐために最も大切なのが、接着前の徹底した下地処理です。
アクリルの切り口は、一見滑らかに見えても微細な傷があるため、まずはサンドペーパーを使って表面を鏡のように平らに整えていきます。この研磨作業を疎かにすると、接着剤が均一に行き渡らず、必ずと言っていいほど気泡が発生してしまいます。
また、接着面の清掃も欠かせない工程です。目に見えないほどのホコリや油分、あるいは静電気で吸い寄せられたゴミが一つあるだけで、仕上がりの美しさは損なわれてしまいます。
素材そのものが持つ純粋な透明度を守るために、職人は何度も確認を重ね、完璧にクリーンな状態で接着に臨みます。派手な作業ではありませんが、こうした基礎的な工程にどれだけの手間をかけるかが、完成した看板を間近で見たときの説得力に繋がります。
気泡一つない澄み切った文字を実現するためのこうしたこだわりは、看板を手にするお客様に安心と満足をお届けしたいという、職人たちの誠実さの表れでもあります。
どれほど慎重に下地を整えても、気泡を完全になくすことは容易ではありません。
そこで、さらなる美しさを追求するために私たちが取り入れているのが、接着剤に「遅乾剤」を加えるという手法です。通常のメチレンクロライドは一瞬で乾いてしまいますが、遅乾剤を混ぜることで乾燥のスピードをあえて遅らせます。
こうすることで、アクリルの表面がより深く、じっくりと溶け合う時間が生まれ、中の空気が自然に外へと押し出されるようになります。この時間の余裕を持たせることが、素材同士を隙間なく密着させ、気泡の発生を最小限に抑えるという魅力に繋がります。
この工程は、単に時間をかけるだけでなく、アクリルが溶ける度合いを見極める鋭い観察眼が必要です。溶けすぎてしまえば形が崩れますし、足りなければ密着しません。
素材の状態を指先で感じ取りながら、最適なタイミングで圧力をかけ、一体化させていく。このプロセスを経て出来上がったアクリル文字は、どこから見ても透明で、まるで一つの大きな結晶のような輝きを放ちます。
急いでたくさん作るのではなく、一つの看板に対してじっくりと向き合い、素材のポテンシャルを最大限に引き出す。こうした「急がば回れ」の精神が、象嵌サインに他にはない圧倒的な質感を与えているのです。
制作の最終段階であり、最も緊張感が高まるのが、金属のプレートとアクリルの文字を組み合わせる工程です。
「象嵌」という言葉の通り、一つの素材の中に別の素材を嵌め込んでいくこの作業は、サイン制作の核心部分と言えます。最新のレーザー加工機やNCルーターを使って正確に切り出された素材であっても、最後は必ず人の手による微調整が必要になります。
金属の切り口にあるわずかなバリを取り除き、アクリルのサイズをコンマ数ミリ単位で調整しながら、パズルのピースを合わせるように慎重に進めていきます。アクリルを金属の枠に固定する際には、これまで述べてきた接着技術を駆使して、一箇所ずつ丁寧にはめ込んでいきます。
このとき、アクリルが持つ「厚み」が大きな役割を果たします。国産キャスト板ならではの重厚な厚みを持たせることで、斜めから見たときにも文字の側面が美しく光り、看板全体に豊かな表情が生まれます。
金属という冷たく力強い素材と、アクリルという温かく柔らかい光を通す素材。この対照的な二つが、一点の曇りもなく一つに融合した瞬間、看板には言葉では言い尽くせないほどの品格が宿ります。
こうした細部への情熱を積み重ねることで、ただの案内板ではない、街の風景を豊かに彩る特別な存在としての価値が形作られていくのです。
私たちがアクリル素材の選定から接着の細部にまでこれほどまでにこだわるのは、看板というものがお店や企業の長い歴史に寄り添い、共に歩んでいくものだからです。
良い素材を選び、その特性を深く理解し、手間を惜しまずに加工する。その全ての工程は、お客様の大切な看板を、一日でも長く美しく輝かせ続けたいという純粋な願いから始まっています。
国産キャスト板ならではの強靭さと、職人の手によって丁寧に処理された接着面の透明感は、完成した直後だけでなく、数年、数十年と経ったときにこそ、その本当の凄みが現れます。看板は、そこにあるのが当たり前のように感じられるものかもしれませんが、実はその中にはこれほどまでの素材の魅力と技術が凝縮されています。
私たちはこれからも、アクリルという素晴らしい素材の可能性を信じ、その美しさを最大限に引き出すための努力を続けていきます。お客様が完成した象嵌サインを初めてご覧になったときの驚きや、夜の静けさの中で美しく光る文字を見たときの感動を想像しながら、今日も一つひとつの工程に真心を込めて向き合っています。
この小さなアクリル板の中に込められた想いが、看板を通じて皆様のビジネスや活動にさらなる輝きを添えることができれば、これ以上の喜びはありません。職人の技と素材の調和が生み出す、本物のクオリティをぜひ感じてみてください。