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街で見かける洗練された看板の中でも、ひときわ目を引くのが、金属の板から文字が浮かび上がって光る「象嵌(ぞうがん)サイン」です。
「お店の顔になる大切な看板だから、安っぽくなくて、夜もきれいに光るものがいいな。素材にこだわると、具体的にどんな風に仕上がりが変わるんだろう?」
その圧倒的な高級感と清潔感を支えているのは、実は表面の金属以上に、光を透過させる「アクリル素材」の質にあります。象嵌サインの制作は、デザインから組み立てまでの全ての工程において、アクリルという素材をいかに美しく、そして丈夫に扱うかが鍵となります。
一見するとどれも同じように見えるアクリル板ですが、実はその中身や作り方には大きな違いがあり、それが看板の寿命や光り方の美しさに直結しています。この記事では、象嵌サインの軸とも言えるアクリル素材にスポットを当て、職人がどのようなこだわりを持って素材を選び、加工しているのか、その舞台裏にある魅力的なストーリーを詳しくご紹介します。
象嵌サインの品質を語る上で、まず避けて通れないのがアクリル板の種類の違いです。
看板業界で使われるアクリルには、大きく分けて「キャスト板」と「押し出し板」という二つの製法があります。ラボリが象嵌サインのために選ぶのは、必ず国産の「キャスト板」です。このキャスト板は、二枚のガラスの間にアクリルの原料を流し込んで、時間をかけてじっくりと固めて作られます。
この製法のおかげで、分子同士が非常に強く結びつき、硬度が高くて熱にも強いという魅力が生まれます。屋外という厳しい環境で何年も看板を掲げ続けるためには、この素材が持つ圧倒的な耐久性が欠かせません。
私たちが信頼を置いている国産キャスト板には、三菱レイヨンの「アクリライト」、住友化学の「スミペック」、カナセ工業の「カナセライト」といった超一流のブランドがあります。これらの素材は、表面の平らさや透明度が極めて高く、光を透かしたときのムラがほとんどありません。
一方、安価な海外製のアクリル板は、分子の結びつきが弱いため、加工の途中でひび割れが起きたり、数年で色がくすんでしまったりすることがあります。せっかくお店の看板を作るのですから、いつまでも変わらない美しさを保ってほしい。
その思いから、私たちは厚みが3ミリから20ミリ、時には50ミリにもなる重厚な国産キャスト板を厳選し、その素材が持つポテンシャルを最大限に引き出すようにしています。
象嵌サインの文字部分を組み立てる際、職人が手にするのは「メチレンクロライド」という特殊な接着剤です。
これは水のようにサラサラとした無色透明の液体ですが、実はアクリルを語る上で欠かせない相棒のような存在です。一般的なボンドのように「くっつける」のではなく、アクリルの表面をわずかに溶かして、板同士を一体化させる「溶着」という仕組みで繋ぎ合わせます。
この方法の最大の魅力は、乾いたあとの接着面が完全に透明になり、まるで一つの塊を削り出したかのような、継ぎ目のない仕上がりになることです。この専用接着剤は非常に扱いが難しく、ホームセンターなどで一般に売られているものではありません。
少しでも扱いを誤るとアクリルの表面が白く曇ってしまったり、余計な場所に垂れて跡が残ってしまったりします。そのため、職人は細い針先を使って、コンマ数ミリの隙間に一滴ずつ、慎重に液体を流し込んでいきます。
アクリルという素材を知り尽くしているからこそできるこの繊細な作業が、看板の内側にあるLEDの光を一切邪魔することなく、どこまでも澄んだ輝きを生み出します。透明な素材を、透明なままに繋ぎ合わせる。
このシンプルに見えて奥が深い技術こそが、象嵌サインに宿る気品を支える大きな魅力なのです。
アクリルを美しく接着するための最大の敵は、目に見えないほどの小さな「気泡」です。
接着面に少しでも凸凹があったり、目に見えないホコリが残っていたりすると、そこに空気が入り込み、光を当てたときに影となって現れてしまいます。この問題を解決するために、私たちは接着前の下準備に、驚くほどの手間と時間をかけます。
アクリルの切り口をサンドペーパーで何度も磨き、鏡のように平らな状態に整える作業は、まさに職人の根気の見せ所です。素材の表面を完璧にフラットにすることで、接着剤が隙間なく均一に行き渡り、空気が入り込む余地をなくしていきます。
さらに、それでも入ってしまう可能性のある微細な気泡を防ぐために、接着剤に「遅乾剤」を加えるという工夫も行います。接着剤が乾く時間をあえて遅らせることで、アクリル同士がより深く、じっくりと溶け合い、中の空気が外へ逃げる時間を作るのです。
こうした見えない部分での創意工夫こそが、完成した看板を間近で見たときの「透明感の深さ」という魅力に繋がります。看板を手に取るお客様には見えない苦労ですが、その積み重ねが、夜の街で光り輝く文字の一つひとつに、圧倒的な美しさと説得力を与えているのです。


象嵌サイン制作のハイライトは、丁寧に仕上げられたアクリルの文字を、金属の板にピタリとはめ込む工程です。
「象嵌」という言葉には、一つの素材に別の素材を嵌め込むという意味がありますが、まさにこの作業こそがサインの形を決定づけます。硬い金属の切り口と、滑らかなアクリルのエッジ。
この異なる素材同士を、隙間なく、かつ無理な力をかけずに組み合わせるためには、機械による精密なカットと、職人による最終的な手調整の絶妙なバランスが必要になります。少しでもサイズが合わなければアクリルは入りませんし、隙間が広すぎれば光が漏れて高級感が損なわれてしまいます。
この組み合わせ作業では、アクリルを金属の裏側から押し出し、文字の立体感を演出していきます。ここでアクリルが持つ「厚み」が活きてきます。
厚みのあるキャスト板を使うことで、斜めから見たときにも文字の側面が美しく光り、看板全体に奥行きのある表情が生まれます。金属とアクリルという、温度も質感も異なる二つの素材が、一点の曇りもなく一つに融合する瞬間、看板には言葉では言い尽くせないほどの品格が宿ります。
こうした細部へのこだわりを積み重ねていくことで、ただのサインではない、街の風景を豊かに彩る特別な存在としての魅力が形作られていくのです。
私たちがアクリル素材にこれほどまでにこだわるのは、看板というものがお店や企業の長い歴史に寄り添うものだからです。
良い素材を選び、その特性を理解し、手間を惜しまずに加工する。その全ての工程は、お客様の大切な看板を、一日でも長く美しく輝かせ続けたいという願いから始まっています。
国産キャスト板ならではの強さと透明感、そして職人の手によって丁寧に処理された接着面の美しさは、完成した直後だけでなく、数年、数十年と経ったときに、その真価を発揮します。看板は、そこにあるのが当たり前のように感じられるものかもしれませんが、実はその中にこれほどまでの素材の魅力と技術が凝縮されています。